「冷水病ワクチンが実用化されるまでのアユの放流」に対する反論
 アユの不漁は、冷水病だけが原因ではなく、川の環境、カワウの食害、放流方法、釣り人のマナーなど複合的な問題が引き起こしたものだと言われています。
 そして、川の環境悪化と放流方法と釣り人のマナーと冷水病は相互に関連性があって、このような課題に総合施策として対処していこうというのが群馬県の方針です。
 冷水病対策としてのワクチンは単に対症療法の一つであって、根本的な原因を改善していかない限りはアユの不漁は回復しないと思っております。ワクチンに頼ってしまうと「河川環境が悪くても大丈夫だ」とか「多少手荒く扱っても大丈夫だ」とかという状況が生まれる可能性もあって心配です。

冷水病の発生原因としては、以下の事が試験研究によって判明しています。

  1. 冷水病菌は河川に常在している可能性が強いが、非常に弱い菌で健康なアユには発症しません。
  2. 冷水病菌は条件性細菌と言われ保菌していても必ず発症するわけではありません。
  3. 発症する条件は、アユのストレス(濁水、冷水、水位の乱高下、なわばり闘争がストレス原因)などです。
  4. 冷水病菌はアユの傷口から侵入して、ストレスで弱ったアユの体内で増殖し発症するともに河川内に菌を放出します。
  5. 低水温時の放流や放流時の取扱い方法によっては大きなストレスや傷を与えます。
  6. 新たな知見で、他の魚種も保菌している可能性があり、放流魚からもうつる可能性があります。
  7. 湖産アユは冷水病菌を保菌している可能性が非常に大きくなっています。
  8. 冷水病に汚染された河川で釣ったアユをオトリとして使う事によってまん延する可能性が大です。
  9. オトリ店での感染アユの取扱い、発症河川の水で畜養したオトリがまん延に寄与してしまいます。
  10. 発症河川での釣行後、不完全な釣り具の消毒等によって他の河川にまん延する可能性が大です。
  11. 使い終わったオトリ鮎(養殖アユ)や奇形、小型を理由に釣ったアユを再放流することで、これら傷つき・ストレスが貯まったアユが冷水病に掛かり、菌の増殖に寄与してしまいます。

 以上のことを勘案して群馬県では総合施策を作成し、漁協、釣り人、関連業者へ協力を呼びかけております。

 しかし、今回掲載された私案の文章では、釣り人の完全な協力は無理であると決めつけ、漁協の放流の仕方や他魚種の放流についての検討もなく、ストレスを減少させる施策も検討せず(私は、人間の所作が冷水病の根本的な原因であると思います)ただ、ただ、ワクチンに頼るという対症療法のみでは、なんら問題の解決がなされないと思います。

 さらに、冷水病を持っている可能性が高い湖産アユを、天然アユが遡上して来ている碓氷川や烏川、鏑川の下流域に放流するという案には賛成できません。江戸川水閘門や利根大堰に働き掛けて運用方法を変えてもらって、大量の遡上がみられ今後の天然増殖に期待しているというのに、わざわざ冷水病菌を持ち込むことは、天然アユに冷水病が発生し親魚が減ってしまう恐れが心配されるのです。アユ放流水域には影響しないかもしれませんが、天然遡上には大きく影響することが今までの経緯で分かっているはずです。それも上州漁協だけでなく利根川全域に影響する事なのです。

上州漁協・松井田支部 監視員 小泉正人