カワウ対策の基本は「狩猟鳥化」だ!


川鵜の捕食(烏川)


川鵜の捕食(烏川)


1、有効なカワウ対策は「大事な釣り場での追い払い・着水防止」しかない

群馬県内だけでなく、3年ほど前からは栃木県など関東各県でも駆除を開始しているにもかかわらず、群馬に飛来するカワウの個体数は、まだ増加傾向を止めることが出来ていません。実は、ペリカン目ウ科に分類されるカワウの仲間は、世界で40種類くらいが生息し、人間の生活圏とカワウの生活圏が重複する地域では、世界各地において食害による影響を発生しているのだそうです。そして、カワウの類が急増する状況を経験した、ヨ−ロッパとアメリカでも人為的な個体数のコントロ−ルを試みましたが、成果と言えるほどの実績は残されていません。

どうやら、日本でも欧米でも実施している銃器による限定的な駆除、生息地からの追い払いや、営巣の妨害などでは「飛ぶことのできるカワウの個体数管理」をすることは不可能なようです。従って、現状において、カワウ対策は、「花火などを使用した追い払いによる飛来防止」と「糸張りなどによる着水防止」を、放流や遡上魚が集中する「大事な釣り場」で地道にやっていくしかありません。


川鵜の飛翔(烏川)


川鵜の着水(烏川)


川鵜(烏川)

2、根本的なカワウ対策は「狩猟鳥化」

限定的な駆除や営巣の制限によるカワウの個体数を効果的に抑制することはできていませんが、食害が問題とならない個体数までカワウを減少させることが期待できる方法があります。

それは「カワウを狩猟鳥化」し、狩猟により捕獲が可能な「普通の鳥」に位置付けることです。

カワウを狩猟鳥化することに反対する人達がいますが、なぜ、現在でも、カワウを「保護すべき鳥」として狩猟法において位置付ける必要があるのでしょうか。はるか40年前、カワウは個体数がかなり減少した時期がありましたが、現在では個体数を急増し、魚類の捕食量が膨大となったことから、地域の生態系の中で突出した存在となり、大きな混乱を引き起こしています。この河川湖沼での実情を考えれば、カワウから特別な保護措置を外し、キジやハトなど同じように「狩猟鳥化」しても良い時期であると私は考えます。
 
狩猟鳥化すればすべての「カワウ食害」が解消するわけではありませんが、カワウを「普通の鳥」として社会が扱うことにより、次のような理由から「特別な個体数の増加」が無くなると考えます。

(1)狩猟の対象となることから、当然、狩猟期間には狩猟で捕獲されること。
カワウの食味は悪い(不味い)ことから狩猟鳥化しても、狩猟の対象としてはハンタ−にとって価値が低いと言われますが、カワウ対策のために多額の経費を支出している漁協が、捕獲したカワウの買い取りをするなどで、狩猟による捕獲は期待できます。しかし、狩猟は狩猟可能な地域でのみ実施され、保護区や休猟区などではカワウを含むすべての鳥獣は狩猟されることなく「保護」されているのですから、カワウも他の鳥獣同様に生息できるはずです。

(2)狩猟可能地区を飛翔し難くなることから、採食水域地域を制限することになる。
狩猟の対象となり銃器で狙われることとなれば、飛翔範囲の広いカワウでも、採食のため行動する水域は狩猟可能な範囲では少なくなり、鳥獣保護区や禁漁区が中心となるはずです。行動範囲の制限が結果として実現できるなら、採食機会の制限の制限、すなわちカワウが利用できる魚類資源を限定することになるはずです。カワウ全体が利用できる魚類資源を限定することは、その地域で生活できるカワウの総数を限定することに直結するはずです。

カワウの狩猟鳥化による最も大きな効果は「採食機会の制限によるカワウ総数の抑制」にあります。


川鵜の群れ(碓氷川)


食性調査


フンによる枯死_高津戸ダム


駆除_高津戸ダム


3、カワウとはどんな鳥?

カワウとは次のような魚類を常食する鳥だと言われています。 
・全  長 約80cm(開翼長:約130cm)
・体  重 1.5〜2.0kg
・採 食 量 1日約500g(体重の1/3〜1/4)
  ※ 水に潜る能力に優れ、捕食可能水深は20mとの指摘もある。
・繁  殖 1回の産卵で3〜4個の卵を生み、このうち1〜2羽が巣立つ。
・繁殖時期 関東地方では、秋〜冬(東北地方で春先、中部地方で夏)
・寿  命 約5年
・生息状況 河川や湖沼で専ら魚類を採食し、水辺の林に集団繁殖地を形成し繁殖し、行動範囲は1日に50_との報告があります。


4、昔はカワウが群馬に生息していなかった

河川や湖沼に飛来し、生息する魚類を捕食するカワウですが、群馬県では昭和57年頃まで見ることはありませんでした。
現役の釣り人である私たちの子供の頃には、群馬でカワウが河川でアユやウグイなどを食べる姿はありませんでした。
さらに、祖父などと同世代の人達から、カワウが群れで魚を補食する光景などの話を聞いたことはありません。
現在のようなカワウが群れで飛来し、河川や湖沼などで「群れで一斉に魚類を捕食する光景」を見たなら、「ショッキングな出来事」として忘れることなど無く、私達のような年下の人間に「昔はカワウが来ると、川から魚が消えるほど食べて・・・・・・」などと話をしたはずです。
群馬の釣り人、誰に聞いてもそのような伝聞は知らないと言います。このことから考えると、少なくとも明治以降において、現在の群馬県地域に「カワウが群れで飛来し、魚類を捕食していた」ことは無かったと判断しても良いはずです。1920年代の狩猟統計に群馬県でのカワウ捕獲が記載されていますが、当時、群馬県に飛来があったとしてもごくまれで、人々の記憶に残るような個体数では無かったと考えるのが自然ですよね。


5、昭和の時代、カワウは絶滅しそうになったことがある  

農薬・重金属等の影響によりカワウの繁殖能力が低下し、1971年には全国で2箇所のコロニ−に約3千羽まで減少し、絶滅が心配された時期がありました。この減少期の名残が、埼玉県などいくつかの県においてレッドデ−タブックで「カワウは保護すべき減少種」として位置付けられていることにあります。


6、カワウは個体数を急増している

しかし、農薬の使用条件の規制などによる水質改善に併せ、次第にコロニ−の数と生息数は増加し、現在では関東地方だけでも2万羽を超えるカワウが生息すると推定されています。かっては、カワウの生息は河川の河口部が中心で、基本的には汽水域の小魚を補食して、その水域に魚が少なくなる冬季に内陸部の河川に飛来して川魚を補食するのが一般的な行動パタ−ンだったようです。 しかし、カワウの個体数の増加と共に内陸部にネグラだけでなくコロニ−(営巣地)を形成し、繁殖して更に個体数を増やし、その飛来する範囲も河川上流部の支流まで及んでいるのが現状です。


7、群馬県内の生息数

かってはカワウの姿を見ることの無かった群馬県地域ですが、昭和57年頃、埼玉県に近い水域で飛来が始まり、次のような増加が見られます。
・昭和57年 :館林市城沼(じょうぬま)と富岡市丹生湖(にゅうこ)で飛来を確認。
・平成 2年 :この頃から飛来が増え始めた。
・平成 5年 :高崎市内の烏川で200羽規模の飛来を確認
・平成 8年 :アユの放流場所への飛来が多く見られるようになった。
・平成 9年 :粕川村「頭無沼」に営巣を確認。
・平成10年 :粕川村「千貫沼」で数百羽のネグラを確認。
・平成12年 :大間々町「高津戸ダム周辺」で300羽〜600羽の営巣を確認。
・ 〜 現在 :県西部では上野村、東部では渡良瀬川流域、北部では水上町(矢木沢ダム)まで 飛来している。また、ネグラについては県内各地で確認の報告がある。
・群馬県による飛来数調査結果(調査時点最多確認数)
 平成11年度(315羽)、平成12年度(592羽)
 平成13年度(437羽)、平成14年度(471羽)
 平成15年度(680羽)、平成16年度(970羽)

現在、群馬県内では約500羽が利用する高津戸ダムを代表として4カ所程度のコロニ−があり、7カ所ほどのネグラなどで1,000羽近い個体数のカワウが生息すると推定されます。


8、2億3千万円分の魚がカワウに捕食されている

すでにカワウの飛来地域は群馬県内すべてに及んでいます。
カワウによる魚類の補食の影響には
(1)直接的に魚類を捕食されること。
(2)カワウに狙われた魚が警戒心が強くなったり、障害物に入ることが多くなり、「釣れなくなること」。
(3)「カワウが飛来し捕食していること」イコ−ル「魚がいなくなり、釣れない」と釣り人が判断し、その釣り場へ行かなくなること。
などがあり、それを評価することは困難です。しかし、飛来するカワウが魚類を捕食していることは間違いのない事実ですから、捕食される魚類を金額評価することには無理がないはずです。


群馬県では毎年3回〜4回実施している飛来数調査の結果を基に、カワウの直接的な捕食による被害を次の様に試算しています
・年間被害額 228,535千円 
・年間捕食量  96,543kg 
 内 訳
  ○試算方法
   食害額 =調査時最大確認数の3カ年平均×A捕食量×B捕食日数×C評価額 
  ○試算の条件
   ・過去3年間最多確認数平均 529羽
   ・1羽、1日当たりの捕食量 500g
   ・捕食魚種及び捕食期間
    ア ユ  4月〜  7月(122日)
    ヤマメ他 8月〜翌年3月(243日) 
  ・魚種毎の評価額(放流用種苗購入価格)
    ア ユ    3,500円/kg
    アユ他の魚種 1,800円/kg


9、群馬県はカワウ対策を頑張っている

群馬県と県内の漁協では次のような対策を懸命に実施し、食害の軽減に努めています。

(1)飛来防止対策
・平成8年ころよりアユの放流場所では各漁協が「花火・おもちゃの鉄砲、案山子、爆音器」などを使用した追い払いを開始し、現在も継続しています。
・平成10年頃より各漁協が放流地点や主要な漁場を対象として、河原に糸を張り、カワウの飛来・着水防止措置を開始し、現在も積極的に実施している。 

(2)有害鳥獣駆除により銃器で捕殺
飛来数の抑制を目的に、群馬県と群馬県漁連は水産庁の補助を受けて、平成12年度から銃器による有害鳥獣の駆除を実施し、合計で500羽を超えるカワウを捕殺しました。これは関東でも最も早い時期の駆除開始であり、この駆除と生息調査のためには、平成12年度以降、累計では3千万円以上もの経費を費やしています。
 ・平成10年〜11年:食性調査のための銃器により捕獲 ( 14羽)   
 ・平成12年度  :有害鳥獣駆除により銃器により捕獲 ( 98羽) 
 ・平成13年度  :有害鳥獣駆除により銃器により捕獲 (145羽) 
 ・平成14年度  :有害鳥獣駆除により銃器により捕獲 (106羽) 
 ・平成15年度  :有害鳥獣駆除により銃器により捕獲 (154羽)

(3)「餌を使用した捕獲」の試行
群馬県内で安全の確保できる、ある程度の広い地域においてカワウを銃器で効果的に捕獲出来る場所は「高津戸ダム周辺」しかありませんでした。このため、安全性が高いので全県で実施できる「餌を使用した捕獲」を平成16年度から試行し、主要な漁場おける追い払い・着水防止の効果の実証を行っています。 
 ・平成16年度〜 :「餌を使用した捕獲方法」により捕獲(14羽)

懸命なカワウ駆除を実施していますが、群馬県内におけるカワウ飛来数は減少しないどころか、まだ増加しています。
全国的に見ても、カワウの個体数と飛来地域の拡大は続いているとのことです。


10、「カワウの狩猟鳥化」を待つしかない

群馬県内ではカワウの飛来と着水の防止、そして駆除に一生懸命にで取り組んできました。
もちろん全国各地でも河川と湖沼の釣り場を管理する漁協関係者は、同様にカワウ対策を頑張っています。
でも、色々なカワウ対策を実施した結果、その効果が期待でき、現在、残されているカワウ対処方法は「大事な釣り場でのカワウの追い払い」と「着水防止」しかないと私は考えます。
残念ながら、これが事実です。
そして、狩猟法において「カワウが狩猟鳥化」となるのを待つしかありません。


※写真とデ−タの提供は「群馬県農業局蚕糸園芸課」と「群馬県漁業協同組合連合会」です。

−−−−− 上州漁協 松井田支部 総代 柳澤政之 −−−−−