冷水病ワクチンが実用化されるまでのアユ放流(私案)

 

−−−アユ稚魚放流は1/2にして、成魚放流の実施!−−−

 

 

 釣り人へのお願い

  • 内水面漁協は地域の釣り人がボランティア的に協力し、釣り場の管理と運営をしています。
  • 釣り人は地域の内水面漁協に加入できるので、漁協に不満や意見のある人は、漁協組合員になり、自ら行動し、良い釣り場つくりに参加してください。


1 アユ冷水病の発生は避けられない

(1)現在の冷水病対策−−−未感染アユ稚魚の放流

 群馬県内においてアユ放流河川を管轄する漁協が実施しているアユ放流方法は「冷水病に感染していないアユ種苗の放流」です。
 群馬県内で冷水病が発生した時、水産研究者も、漁協関係者も、釣り人も、誰もが原因と対処方法が分からず、河川へ放流したアユが潰瘍などを発症して、流され、いなくなってしまうことに困惑したのが最初の段階です。
 そして、アユが死んで流れる原因が冷水病であることが判明したのが次の段階です。
 現在は、根本的な対策である「冷水病ワクチンの実用化」と「冷水病に耐性がある種苗の開発」を待ちながら、「冷水病に感染していないアユ種苗の放流」を実施している状況にあります。
 しかし、「冷水病に感染していないアユ種苗の放流」を上州漁協で過去6年以上、毎年実施してきた結果は、次のような状況であると私は判断しています。
    1. 放流後の生残率に差はあるものの、解禁までアユは成長する。
    2. しかし、解禁後は釣り人が持ち込む釣り具やオトリに付着している冷水病菌による感染が間違いなく発生するようだ。
    3. そして、冷水病に感染したアユが、冷水病の症状を発生し、その影響で死んだり・流下するかは、河川の水温がどのように上昇するかで決まるようだ。
      具体的には、梅雨の時期が短く、河川水温の上昇が早い年はアユが生き残り成長を続けて、釣果が出た。
    4. 「冷水病に感染していないアユ種苗の放流」の効果は、解禁となり、釣り人により持ち込まれる冷水病菌に感染し、症状をアユが発生するまでの、解禁日から2週間程度の釣り期間を作り出すものと考えることが妥当である。


2 今後のアユ冷水病対策は

 アユ冷水病が全国に蔓延して15年くらいが経過します。
 釣り雑誌やインタ−ネットを見ると、天然遡上が主体の河川では、アユ好調の情報も見受けられます。
 これは、自然繁殖をしているアユの系統が、冷水病に対する耐性を徐々に得てきたと考えられるので、今後、天然遡上の河川では冷水病の影響が縮小していくのでは思います。
 しかし、群馬県内では、現状で実施している「冷水病に感染していなアユ種苗の放流」から、さらに冷水病の影響の無い放流の段階へステップアップさせるためには、次の2項目の実用化しかないと思います。

 群馬県水産試験場などが進めている、冷水病に耐えられる海産系アユの系統を用いた人工産種苗の開発の早期実現を期待したいと思います。

 そして、根本的な冷水病対策は「ワクチンの実用化」だと私は考えます。

基本的なアユ冷水病対策は

  • 根本的な対策は−−−「冷水病ワクチン」
  • 今後期待されるのは−−−「冷水病に耐える人工種苗の開発」

しかし、両対策とも実用化がまだです


 そのため、琵琶湖産種苗であろうが、人工種苗であろうが、冷水病に感染していない種苗であろうが、どのようなアユ稚魚を放流しても、解禁になれば釣り人が持ち込む「冷水病菌」に感染してしまいます。
 そして、冷水病の症状が発生しやすい水温期には、発症し、アユが流下するか、死亡するのが、上州漁協だけでなく全国各地で繰り返してきたアユ放流後の推移です。

 平成17年のように、空梅雨の影響により河川水温の上昇が急激で、冷水病の症状が発生しやすい水温期間が短かったので、河川で成育した人工種苗アユが冷水病に感染しても影響が少なく、成長したアユが好調に釣れ続けたのは幸運なシ−ズンと見るべきだと考えます



3 「ワクチン」が実用化されるまでのアユ放流方法(私案)

(1) 上州漁協でアユ釣りを楽しむために

 上州漁協では、6年以上も前から、「冷水病に感染していない人工アユ種苗」を放流する冷水病対策を実施してきました。
 しかし、好調にアユが釣れた年よりも、冷水病が発生し、解禁から2週間の釣りシ−ズンだった年の方が多い結果となっています。
 「冷水病に感染していない人工アユ種苗」の放流は、理想的な条件での放流方法としては適切だと思います。
 でも、実際の河川においては、解禁後、釣り具やオトリに付着した冷水病菌の持込を阻止するため、釣り人全員から完全な協力を得ることは無理なようです。
 少数の人でも、冷水病菌の付着したオトリや釣り具を持ち込めば、その下流には冷水病が蔓延するようです。
 従って、繰り返しになりますが、「冷水病に感染していない人工アユ種苗」の放流は、解禁から2週間のアユ釣りを楽しむことを実現するものだと考えるのが、消極的ですが、現実的だと私は考えてます。
 その上で、私は上州漁協における今後のアユ放流方針を次のようしたら良いのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

「冷水病ワクチン」か「冷水病に耐えられるアユ種苗」のどちらかが実用化するまで、アユ稚魚放流事業は縮小する

  1. 減額する稚アユ放流予算で成魚アユの放流水域をつくる
  2. 最下流水域で「琵琶湖産アユ」の試験的放流を実施する

 (2) 上州漁協のアユ稚魚放流量は1/2に

 人工種苗を放流する上州漁協の河川で、放流されたアユ稚魚が無事成長し、解禁後も生き残り、秋季まで釣れ続けることは「特別に幸運な状況」であることは、過去の実績が物語っています。
 上州漁協の河川における「冷水病に感染していない人工アユ稚魚の放流」は、解禁後2週間の釣り場を作るためで、秋季まで釣れることは「数年に一度の幸運」を期待する行為なのだから、冷水病ワクチンが実用化されるまで、アユ稚魚放流事業は縮小するのが賢明な判断ではないでしょうか。
 収入に対して過大なアユ稚魚放流資金を投ずる余裕は上州漁協にはありません。
 具体的は、アユ稚魚放流規模をここ数年の1/2に縮小し、放流水域は水質が良好に保たれている上流域に限定するのが、アユ稚魚放流における現実的な選択だと私は考えます。
 この様な放流を継続して、「数年に一度の幸運」なアユの釣りを期待しようではありませんか。

 また、減額した稚アユ購入予算を使って「成魚アユの放流水域」を作ることが、現実的な釣り場運営だと考えます。

 そして、「冷水病ワクチンと冷水病に耐えられる種苗の実用化」を待ちましょう。

(3)成魚アユ放流による限定的な釣り場

 上州漁協の河川では、毎年、冷水病の感染・発症があり、多くの年で解禁して2週間以降においてアユの生残が難しい状況にあります。
 それならば、アユ種苗購入費の1/2を保留し、解禁になり、冷水病の影響が発生し、河川からアユが消える状況を迎えたら、成魚放流をして欲しいと考えます。
 既にアユ成魚の放流による釣り場運営は関東周辺でもいくつかの漁協で実施しています。
 1尾あたり150円~250円と購入単価が高いアユ成魚の購入費と入川する釣り人による釣り券収入の関係、「費用対効果」を考える必要があり、広範囲な水域で実施することはできないですが、冷水病の影響軽減の現実的な方法だと私は考えます。
 「養殖により成魚まで育ったアユを放流した釣り場でも、友釣りを楽しみたい」と考える釣り人も多いようなので、部分的な水域に限定し、「成魚アユ放流による釣り場」の運営を実施してもよいのではないかと考えます。

(4) 琵琶湖産アユの試験放流

 冷水病の発症が軽い、梅雨時期の短い、暑い年ならば、琵琶湖産アユ種苗が冷水病に感染していたとしても、放流後における冷水病の影響は許容範囲で済むのではないかと私は考えます。
 例年どおりの天候で推移すれば、放流された琵琶湖産アユ種苗は冷水病を発症して「いなくなってしまうこと」は、過去、上州漁協が繰り返し経験したことです。
 しかし、放流水域の下流部に限り、琵琶湖産アユ種苗を放流して、低水温期の短い「幸運な年」の出現を祈ることも検討に値すると考えます。

  琵琶湖産アユの「当たりの激しさ」「魚体の良さ」を私は大好きです。
 あの「目印が飛ぶ」鮮やかなアタリを数年に一度味わうことができるなら、冷水病でダメな年は、琵琶湖産アユ放流水域での友釣りは潔く諦めようではありませんか。
 数年に一度訪れる、河川の水温上昇が早い「アユ生残に恵まれた年」であるなら、冷水病に感染していない人工産アユ種苗だけでなく、琵琶湖産アユ種苗も育ち、生き残ることが期待出来ます。

 他のアユ放流水域へ影響しない、限定した下流部での「琵琶湖産アユ種苗の試験的放流」を上州漁協管内でも検討する時期なのではないでしょうか。

(上州漁協 松井田支部 監視員 柳沢 政之 )