群馬県の鮎について

元漁協役員MSです。
もう10数年も前から冷水病の報告をし、国の単位で対策をしなければ鮎つりは全滅するだろうと言ってきました。

このような言葉は当時はまだ認識されておらず、負け犬の遠吠えのように誰も気にも止めておりませんでした。
琵琶湖産の鮎は業者の強気な発言に押し捲られながら全国的に蔓延するまで続き、漁協も疑心暗鬼に戸惑いながら放流をやめたり少なくしたり努力はしていたのです。

個人的に琵琶湖まで調査に行ってきたりしました。
琵琶湖産の鮎も池の中にいるときは薬品を使用したり温度管理で病気らしい鮎は全く見られませんでしたが、いったん管理池を出て自然の川に放流されたと同時に発病して弱って流れに耐え切れず少しずつ下流に流されたり死んでしまったりし、ある程度18センチ位に育っても弱って流されてゆくという現象はもう誰に目にも確認されたことでした。

当時活躍した鮎が群馬県で孵化から成魚までの全工程を確立していた鮎でした。
その後少しずつ異変は現れていましたが琵琶湖産に比べたら格段の差があり、ある程度は楽しむことも出来ました。

ある年、群馬県産以外は県内に放流しないという事で県内全河川にこの鮎を放流した年がありました。
県外の稚鮎を放流する場合は「稚鮎のサンプルを提出し検査をしてからでなければ放流してはならない」と言う通達が出ました。
結果は実に惨憺たるありさまでした。
業者に委託しなければ県内全河川に放流するだけの稚鮎がまかなえない。
県で初期飼育された稚鮎が業者に委託飼育を任されたのです。
飼育工程は同じでも生育環境の異なった鮎がそれぞれ池単位で各河川に放流されたのです。

私は烏川の解禁に出かけてゆきましたが竿を出さずでした。
オトリ屋さんが釣り券を売ってくれないのです。
鮎がいないんだよ!!
他の川はどうであったか? 初めだけつれて後が続かないか、烏川と殆ど似たり寄ったりでした。

そんな中で吾妻川では釣りになっていました。
この川は酸性が強いため中和剤の石灰を多量に拡散加入して水質を保っている川です。
私は石灰が何かの役目を果たしているのではないかと注目をしていたのですが、誰かが言いました。
「あの川は業者の鮎ではなく県が手塩にかけて育てた鮎だからだ」と。

渡良瀬川も解禁の日だけは人ごみをするほど釣り人が集まりましたが釣れたのはほんの一部のポイントだけ、沢山釣った人のオトリ缶の中は穴明き鮎が3割以上もいて顔を背けたくなる雰囲気でした。
翌日も同じポイントで釣っている人のオトリ缶の中は赤むけ鮎が5割ほどみられ語る言葉を失いました。
釣れるポイントは瀬の中ではなく瀬脇のよどみに群れている小さなやつばかり。
そして1週間もたつと釣り人の姿が川から消える。
寂しいねー 実に寂しい。

私はその数年前から「天然遡上の鮎しか当てにならない」と言って富山、新潟、山形、秋田と釣りの旅をはじめました。
富山県の神通川では、役員が「今年も鮎がおかしい」と言っていたので全国的に琵琶湖産がおかしいのです。
「他の県の漁協に問い合わせて御覧なさい。もっと勉強しないとつぶれていく漁協もでているのですよ」と注意を促したのです。
翌年ネットで見たら13トンも放流していた神通川に琵琶湖産を入れてないことが書かれておりました。

この年、中部地区のある川で群馬県産の鮎が活躍をし、一躍救世主のようにアッピールされ有名になりました。
しかしこの年も群馬県内の鮎は不漁だったのです。

今年、私は2回しか東北へ行っておりません。
1度目は秋田、二度目は山形、つまり2回しか鮎つりをしていないのです。
天候不順もあったかもしれませんが病気が入ってきております。
山形県では小国川の鮎から孵化させた鮎を全県に放流したらしいですが群馬県の二の舞をしなければと案じております。

考えるに、人間が手を加えれば加えるほど鮎の質が悪くなっていくような気がしてならないのです。
秋田県や山形県は天然遡上が余るほどいるのを良いことに手を抜いていますね。
遡上を初めから計算に入れて「鮎は自然に遡って来るから放流量は心配ない。」等とたかをくくっていたら今年は遡上が殆ど当てにならない状態であったらしい。
魚道は全く手入れをされておらず、あっても鮎の稚魚にはやさしくない構造である。
今までは良かったかもしれないし遡れない鮎などいらないと言う輩もいるでしょう。
けれども河口に渦巻いている稚鮎を全県に採取配送をする努力もしてみるべきではないでしょうか。
天然遡上のない漁協から見たら羨ましい限りであります。

今群馬県が日本一の鮎を目指してシンポジウムを開こうとしております。
遅きに失しておりますが努力は買いです。

しかし私が思うに冷水病は疫病でしょう。
もう10年も前から言っていることは対症療法ではだめだと言うことです。
原因療法を取り入れなければ鮎は昔のようには回復しないと思っています。
早めに大きな稚鮎を放流して6月中に友釣りをして7月、8月は鮎はいないので終わりなどというのは釣りではない。
この危機を救うのにはワクチンしか無いと考えています。

中間宿主となる生物(魚や何か)が菌を持って年を越し、その菌が放流した鮎に取り付いて発病にいたる。
どこかで歯止めをかけなければ楽しい鮎釣りが出来なくなってしまいます。
国の単位で対策をしなければと書きましたが漁協や魚連の単位ではワクチンの開発など出来ないからです。
日本全国の漁協が一丸となって国に働きかけ疫学者に研究をゆだね一時も早くワクチンを開発してもらいたいものです。

今、養鯉業者が鯉ヘルペスに大変な被害を受けております。
彼らには生活がかかっておりますから真剣です。
私たちはレジャーだからなどと言っていたら、また10年は遅れてしまいます。
群馬県頑張れ! シンポジウムが成功し、新しい何かが生まれ出ることを祈ります!