平成15年の上州漁協アユ釣り概況

アユ計量

アユ放流稚魚

アユ養魚場

 河川により、今年の上州漁協管内におけるアユ釣りは異なったようです。
 一般的な感想とすれば「平成15年における上州漁協のアユ釣り」は「普通」と「悪い」の間くらいだったのではないでしょうか。「西牧川は解禁日に20センチ近い良型を40尾以上釣った人がいる」「南牧川の上流部では70歳過ぎの人が2週続けて40尾近く釣り上げた」「九十九川では解禁日に30尾以上げた人が30人を超えた場所がある」「磯部地区の碓氷川では数年ぶりにアユが釣れ、毎日釣り人の姿が絶えない」などと、元気の良い情報も解禁から3週間近くの期間は聞こえてきました。

 上州漁協事務局に寄せられた苦情の数も、昨年・一昨年は解禁後しばらくの間に多数電話があったのですが、今年は「苦情がまったくなかった」という状況でした。
 群馬県内のすべての河川どころか、群馬県内の釣り人が通う他県のアユ河川も含めて、冷水病の影響が出て芳しくない状況にあることから、釣り人の多くがあきらめの気持ちが強いので、苦情を出さなかったのかもしれませんが・・・・。

1 アユ釣りは7月に終わった

 冷水病が流行する前は、7月からが、大きく成長した元気なアユが釣れる時期でした。しかし、過去10年くらいの期間、アユ冷水病が発生した河川では、6月中に冷水病の症状を発症した多くのアユが死んだり、流下したりして、7月に入る頃には魚影が見られなくなっていました。

 上州漁協管内の釣り場監視をしながら烏川、碓氷川、鏑川の本支流を見回っていますが、6月下旬にはすでにアユ釣り師の姿がまばらになり、7月中旬以降は特定の場所にしか竿を出していない状況となってしまいました。

 残念な結果ですが、「上州漁協管内における平成15年のアユ釣りは7月中に終わってしまった」と考えなければいけないと思います。

2 放流作業を担当した役員・組合員が一番ガッカリしています

 6月8日の解禁から3週間くらいでアユが釣れなくなってしまった「今年のアユ釣り」は、年鑑札を購入していただいた釣り人には「おもしろくない状況」のはずです。しかし、アユが釣れなくて最も気落ちしているのは、アユ稚魚の放流のために早朝から養魚場まで出かけ、半日以上かけて放流河川まで「稚アユは大丈夫か」と心配しながら運搬した星野放流部長・淡島理事・伊藤理事他の放流担当者です。

 大勢の地区役員の方々も放流では作業を担当しているのですが、星野放流部長・淡島理事・伊藤理事などの責任者は、アユ放流に関しては、延べ15日間も、休日だけでなく、仕事も休んで平日の放流を実施し、本業にも影響しているほどに時間と労力を提供して「頑張って」います。それだけに、今年を含め数年続いたアユ不漁には「無力感」を感じるほど落胆しています。
 まして、今年は「冷水病に感染していない健全なアユ稚魚」であることを確認し、「信頼のできる特定の養魚業者」から購入して放流しただけに、今後の冷水病対策に窮する事態を迎えています。

3 アユが消えた原因は?

 上州漁協管内の河川では、6月8日(日)解禁になった時点でそれなりに釣れた場所もあり、けっこう楽しんだ釣り人もいたと聞いています。でも7月中旬には河川からアユ釣り師がいなくなった、すなわち「河川からアユが消えた」原因はどうしてなのでしょうか。

 大勢の釣り人が色々な意見を口にし、上州漁協内部でも意見が分かれていますが、なにしろ「群馬県水産試験場」でも状況の把握ができていないようです。従って、現在、「アユの消えた原因」には次のようなものが考えられていますが、上州漁協で稚アユの運搬・放流を担当し、河川監視をしながら釣り場を観察していた組合員の参考意見として下さい。

(1) 冷水病がやっぱり発症した!

 冷水病に感染していないことを確認した特定の養魚場から健全な稚アユを購入し、上州漁協管内の河川に放流した成果として、ある時期までは各水域でおおむね順調に成育しました。しかし、やはり「河川内に存在したと考えられる細菌」の感染が起こり、河川の水温が上昇し、冷水病が発症しやすいといわれる「水温16℃〜20℃」の状況を迎えると、徐々に「潰瘍」など「冷水病」の症状を有したアユが釣れたので、上州漁協管内の全河川で「冷水病の発症」があり、その影響があったことは事実です。

 特に顕著だったのが「6月10日前後の烏川」であり、解禁後まもない河川で、アユの死魚を多数目にする結果となりました。冷水病の影響は「アユが死亡すること」が最大ですが、発症すると「体力が弱り」、河川を流下してしまうような気がします。

 そのように考えなければ、碓氷川と鏑川で順調に生育していて、冷水病の症状もそれほどでなかった水域で、解禁日にはそれなりに釣れたアユが、流される死魚も見えないのに、いなくなってしまうのはおかしなことです。

(2) 放流した稚魚の尾数が少なかった?

 以前と比べて放流できているアユ稚魚の尾数はかなり減少しています。放流用種苗を人工産に変えて以降、早期に大きめのアユ稚魚が成育できることとなり、放流に使用する人工産アユの稚魚は10グラムに近い状態となってきました。

 冷水病が流行するまで放流していた琵琶湖産稚アユは5グラム以下だったということですから、琵琶湖産稚アユと単純に比較すると、同じ放流重量であっても、放流できる尾数は半分以下になってしまっています。現在、放流に使用している人工産アユについては、群馬県水産試験場が7グラムサイズの稚魚放流を推奨し、上州漁協でも7グラム前後の稚魚の出荷を養魚場に要請しましたが、養魚場が採算性を重要視した結果、今年は10グラム近い稚魚の出荷を上州漁協が受け入れることとなりました。

 この10グラム近いサイズの稚魚を放流した結果は、群馬県水産試験場が推奨する「人工産アユ種苗の7グラム前後」と比べて放流尾数は当然の結果として3割程度減少しています。今年の上州漁協が購入したアユ稚魚は5,931キログラムな
ので、当初予定の7グラムサイズの稚魚であれば約84万5千尾放流できたのですが、10グラム近いサイズを中心とした稚魚の出荷を受けたので、約59万1千尾の放流実績となり、組合の総会で議決された予算内において、アユ放流担当役員が予定した放流計画と25万4千尾の差が生じたはずです。

 この、原因としては、各漁協で構成している群馬県漁業協同組合連合会(通称「県漁連」と言います)と養魚業者が協議した結果、アユ稚魚の価格は「養魚場を出荷する時点で、体重5グラム〜10グラムのアユ稚魚を1キログラムあたり3,600円を目安とする」として、上州漁協もこれに従ったことが挙げられます。5グラムの大きさまで育った稚魚をペレットの給餌により7グラムまで育てるのは、5グラムサイズまでの大きさに育てる手間と経費よりはるかに効率が良いし、7グラムから10グラムの稚魚に育てるのは更に効率が良くなり、必要とする期間も1週間〜3週間程度で十分なようです。

 従って、養殖業者は採算を考慮すればどうしても大きめの稚魚、10グラムに近いサイズの稚魚を出荷することとなります。そこで、(当然のことですが)漁協が望むサイズの稚魚を放流できるよう、今後、上州漁協ではアユ稚魚購入に当たり、魚体サイズで5グラム〜10グラムまで間を1グラムごとに区分し、1キログラムあたりの価格を設定するか、群馬県水産試験場が推奨する7グラムのサイズの稚魚価格を1尾の標準価格として「1尾いくら」の購入形態にすることを、アユ放流担当役員が検討しています。

(3) 放流後の定着状況が芳しくなかった?

 全体で放流した5,913キログラムのアユ稚魚は平均体重が約10グラムですから、約59万1千尾が上州漁協の河川に間違いなく放流され、冷水病が発症するまでは順調に生育したはずです。

 しかし、放流量、放流場所におけるハミ後、(冷水病が発症する前に実施した)解禁前の試し釣り結果などを総合すると、「放流後の定着状況が芳しくなかった」と考えています。例年であれば4月〜5月にアユ稚魚放流を実施していました。冷水病の発症前に釣ってもらうため早めた解禁日でも成長したアユが釣れるように、今年のアユ稚魚放流も早め、3月から実施してきました。

 これは放流用アユ稚魚を、琵琶湖産から人工産に変えたことにより、水温の高い水槽で育てられた稚アユが、3月には放流に適した7グラムサイズまで成長し、漁協が購入できることから考えた方法です。

 しかし、アユ放流を始めた3月20日頃の河川水温は、松井田町などの中流部で5℃前後であり、碓氷川への放流種苗を購入した赤城村「斉藤養魚場」の水温12℃と比較すると7℃の差がありました。もしかすると、この水温差という、魚類が生きていく上で大きな要素が影響し、虚弱な稚アユが多少流下したのではないかと想像しています。

 稚魚を積んだ運搬車が放流地に着くと、バケツに汲んだ河川水を車両へ運び、水槽に入れて、水槽と河川の水温差を3℃以下まで小さくして、稚魚をその水温に馴らしてから放流しました。河川へ放たれたアユ稚魚は元気に泳ぎ出しましたが、直前まで飼育されていた養魚池の水温と河川の水温差が大きいことが影響を及ぼすことは考えられます。どのくらいの水温差まで問題ないかが今後の研究課題ですが、できるだけ水温差の少ない状態で放流をしていきたいと考えています。

(4) 碓氷川では「濁水の影響でアユが下った」かもしれない?

 「アユ稚魚は放流の際に河川水が濁っていると流下してしまう」とアユ放流作業を長く経験している組合員が言いますが、冷水病で体力が落ちている状態のアユも、強い濁り水が出ると、流下するような傾向があると考えています。

 今年の碓氷川では、横川地区と坂本地区の河川工事や鉱石採掘現場からのものと思われる濁水が出て、流下した濁りが松井田地区を夜10時以降に流れることが度々ありました。これが原因となり流下した「冷水病に感染したアユ」が多かったのではないかと考えています。

 上州漁協では渉外担当の遠山理事(高崎支部)が該当する河川工事の現場へ出向き、責任者へ注意をしてきたのですが、残念ながら、それ以後も濁りは出ていました。

4 上州漁協の冷水病対策

 昨年のように、解禁日からまったくダメであった状況ではなく、3週間程度、ある程度の水域で釣りになったことは多くの釣り人が認めてくれています。これは冷水病対策として次のような方策を実施した効果だと考えられます。今後も上州漁協ではアユ放流に関して、効果が期待できるあらゆる方法、各地で成果を上げている対策を取り入れ、「釣れるアユ河川の実現」のために努力していきたいと考えています。

 釣り人の皆さんも御理解の上、できることなら「良き釣り場」の実現のために、一緒に放流と釣り場管理をして下さるようお願いします。漁協は「地域の釣り人」が組合員となり「釣り場の管理」をしている団体であり、地域の釣り人であれば誰もが加入できます。

(1) 健全なアユ稚魚の放流

 昨年までのアユ稚魚を購入した養魚業者の池が冷水病に感染してたかは不明ですが、放流したアユ稚魚が河川で成長する過程で冷水病の症状を発生し、多くが死ぬか、弱って流下したことは釣り人が目にしました。そして上州漁協が採用した基本的な冷水病対策は「冷水病に感染していない健全なアユ稚魚を放流すること」です。

 誰もが考えつく方法ではありますが、その実施は思いのほか大変です。なにしろ養魚業者の信用と生活に直結することですから・・・・・・。

 平成15年のアユ放流は冷水病に感染していないことを確認した次の養魚場だけからアユ稚魚を購入し、河川ごとに放流する養魚業者を特定しようとしました。放流の当日にも、河川へ放流する直前の稚魚から検査用の魚体を確保し、群馬県水産試験場で検査した結果でも、上州漁協の河川へ放流したアユ稚魚は冷水病に感染していないことが確かめられています。
・烏 川水系 倉渕村 市川養魚場
・碓氷川水系 赤城村 斉藤養魚場
・鏑 川水系 藤岡市 三協養魚場
       福島県 熊田養魚場

(2) 大きなサイズの稚魚による早い時期の放流

 水温が高い地下水を使用している県内の養魚場で飼育され、早期に大きく育った、平均体重9.5グラム前後、体長10センチ近くもある人工産アユ稚魚を、例年より1ヶ月近く早い3月下旬から放流しました。このため、解禁日を例年より2週間程早めたことにもかかわらず、解禁で「釣れたアユの型」は、体長が「18センチ〜19センチ」で、体重が70グラム前後と予想を上回る大きさのアユでした。

 しかし、大きなアユ稚魚を放流した反作用として、放流できたアユ稚魚の総尾数は7グラムで予定した放流量の7割弱まで減少したことも事実です。

(3) 解禁日を2週間早めた

 消極的な考え方ですが、放流したアユに冷水病の感染と発症が避けられないなら、河川で生息するアユに冷水病が発症する前に解禁して、成長したアユを釣ってもらおうというものです。今年の上州漁協管内の河川では、この解禁の早期化がかなり効果を上げたと思います。

 6月8日(日)の解禁から3週間程度は「南牧川上流」「西牧川」「碓氷川の一部水域」などでそれなりに釣れたのは、この冷水病が本格的に発症するまでの期間、友釣りができたのだと考えるのが自然だと思います。特に烏川では、解禁直後から冷水病が発症し、かなりの数のアユ成魚が弱ったり死んで流れを下るのが確認されているのですから、例年どおりの6月第3週の日曜日にアユ解禁を設定していたら、「烏川での友釣りはできない」状況だったはずです。

−−−−− 上州漁協 松井田支部 総代 柳澤政之 −−−−−