そして退院

Vol.64

「市橋さんは若いから治りも早いね、そろそろ退院しますか!」
「します!」(でも56才の私が若い?)
確かに病室はお年寄りだらけ、そして男の人の方が多いようです。
男は情けない生き物のようです。


         


病院の話は今回で最後になります。

病室のベッドはカーテンで仕切られているだけですから、
隣の様子は手に取るようにわかります、話の内容も殆ど聞き取れます。
そう、いろんな人がいます、いろんな気持ちが読み取れます。

「参ったなー、何で俺だけこうなるんやろ、参ったなー」
ちょうど年恰好は私ぐらい、体躯は私より一回り大きな人です。
思い出したようにつぶやくんです。
声は大きくないのですが、低音で響く音です。
「参ったなー、なんか俺、悪い事したんやろか、参ったなー」

よく喋る(寝て、いびきをかいている時以外)おじいちゃん、70過ぎぐらいです。
10時に、お見舞いの人が来ます、
「夜中に救急車で運ばれてくる人って多いんやなー、昨日なんか10回もや」
3時に、違う人がお見舞いに来ます、
「夜中に救急車で運ばれてくる人って多いんやなー、昨日は15回もあった」
夕方に、又、お見舞いの人が来ます、
「夜中に救急車で運ばれる人って多いんやぞ、昨日なんか20回もあった」


「いい骨休めやと思って、ゆっくり治して!また来るわ」
お見舞いに来る人の殆どは、5分もしないうちから、
この言葉を切り出すタイミングを計っています。
仕事の絡みの人は勿論、親戚、時には家族までもが・・・
ちょっと淋しいですが、人の本音はそんなところなのでしょう。

1日に1度、嫁さんが私の病室をのぞきます。
「もう帰っていいよ」(本当はもう少しいてよ)
どうも素直になれない私です!



 

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